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『日本人の食事摂取基準(2025年版)』を読み込もう!

栄養管理に携わる者は『日本人の食事摂取基準』を誰よりも知っているはず

厚生労働省より『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書が発表されたのは昨年10月のこと。今年2月には情報が更新されて最終版が確定しました。すでに厚労省主催の研修会が終了し(3月に厚労省ホームページで研修会の動画が公開される予定とのこと)、来月には第一出版社、女子栄養大出版部から書籍となって、私達のもとに届くことでしょう。

『日本人の食事摂取基準』は日本人の食と健康に関する重要な資料です。私達は集団や個別の栄養管理や栄養評価、その他、健康施策の立案にも使いますし、商品開発を行う上でも必要なものです。このブログを見てくださっている皆さんはすでに”2025年版”の内容は確認されたでしょうか?『日本人の食事摂取基準』の内容を誰よりも知っているのは管理栄養士・栄養士であるはずですね。

弊社では、20年来、管理栄養士向けに栄養介入の成果を導くための栄養指導・栄養相談のやり方や食事評価の仕方などについてセミナーを行い、時に、日本栄養士会や病院・薬局・市町村等から依頼される研修会も引き受けさせていただいています。

その中で長年、気になっていたことは『日本人の食事摂取基準』を日常的に活用している方々が少ないということです。私が考える「日常的に活用している」というのは、書籍のどこに何が書いてあるかを覚えており、いつでもその場所を見つけられ、さらに、引用されている研究結果などをよく読み、その結果を取捨選択して実務に応用できている、ということです。

『日本人の食事摂取基準(2025年版)』はどのように 実務で使うのか?

日常的に病院やクリニック、薬局、市町村などで栄養相談・栄養指導を行っている方々は日本中にとても多いと思います。この『日本人の食事摂取基準』は皆さんが行う「食事アセスメント」の際に、対象者に適する食事内容を設定し、問題視する基準を決める根拠となるものです。

初めて『日本人の食事摂取基準』が発表された時は「健康な人」またはその集団が対象でした。それから、年々、情報は更新されて、”2015年版”では疾患の発症や重症化予防の視点が加わり、”2020年版”では対象となる人々は健康な人やその集団に限らず、疾患を抱えていても自立した日常生活を営んでいる方々やその集団ということに変化しまさした。”2025年版”でも”2020年版”と同様です。つまり、疾患を抱えている方々:高血圧症、脂質異常症、糖尿病、そして、慢性腎臓病(CKD,おおむね軽症といえるステージG1~G3a)にまで適用が広がったということになります( 厚労省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』 策定検討会報告書 のP1・P449)。        

こうも書いてあります。

「疾患を有していたり、疾患に関する高いリスクを有していたりする個人及び集団に対して治療を目的とする場合は、食事摂取基準におけるエネルギー及び栄養素の摂取に関する基本的な考え方を必ず理解した上で、その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理指針を用いることになる。」                       『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書 P1「1 策定方針 1-1 対象とする個人及び集団の範囲」

ここはとても重要なことで、今や疾患に関する治療ガイドラインの中にある「食事療法」を最優先するということではなく、『日本人の食事摂取基準』の考え方を踏まえた上で、目の前にいる一人ひとりの対象者に適した栄養管理計画を決定しなければならないということなのです。『日本人の食事摂取基準』の考え方を理解しないで、治療ガイドラインに書かれている情報だけを適用しても栄養介入の成果は上がらないということもあるということになるのです。

弊社の管理栄養士は私も含め、特定保健指導や医療機関での栄養指導で長年、『日本人の食事摂取基準』を用いて栄養介入を行い、栄養介入の効果を無作為割り付け試験で検証し、よい結果を実証できています。「食べることで栄養改善を図る」- 弊社の管理栄養士達が、管理栄養士の最も重要なミッションで成果を上げることができ、他職種から頼りにしていただける存在と実感できるのは、『日本人の食事摂取基準』に書かれている先人の方々の科学的な検証や研究結果を用いているからと言えます。

『食事摂取基準』のどこから読めばよいのか?最も重要なところは?

もちろん、『日本人の食事摂取基準』はどの部分も重要ですが、先ず、読まなければならないところは「Ⅰ総論」です。特に最も先に読むべきは「4 活用に関する基本的事項」です。「食事アセスメント」では、対象者の習慣的な食生活(料理や食品)を把握し、それをエネルギー・栄養素に換算して『日本人の食事摂取基準』に示された数値と比べて、対象者の食生活上の摂取量過剰や摂取量不足を判定することになります。栄養介入で成果を上げるには、この作業を間違いなく行い、さらに「栄養診断」で改善しなければならない事柄に直結する問題点を1つか2つ、選定する。これが成果を上げるための第一関門となります。

次は、「各論 3 生活習慣病及び生活機能の維持・向上に係る疾患等とエネルギー・栄養素との関連」です。慢性疾患の栄養介入で成果を上げるためには必須です。このエビデンスを活用すれば、栄養介入の成果が上がります。反対に、これらを活用しないで栄養介入を行っても状況は変わらず、対象者に不利益を与えることになりかねません。まだ読んでいない方は至急、読んでみましょう。

実務の中で『日本人の食事摂取基準』を活用するためには、日頃から疑問に思ったことを常に調べることがコツです。「この対象者のエネルギー必要量はどのくらいだろう」「たんぱく質量はこれでよかったかな?」「推奨量ってなんだっけ!」「この方の身体活動レベルは”低い”でいいのかな」等々

『日本人の食事摂取基準』ですぐに調べるために、よく使いそうな事柄が書かれているページにはインデックスをつけておくと、何時でも容易に調べたい場所を見つけることができるので、皆さんにお勧めしています。疑問が浮かんだらすぐに調べたリ、曖昧な記憶を確かめたりしているうちに、実務でも使いこなせるようになります。また、エビデンスに基づく栄養介入ができるようになるのです。

 

弊社が提供させていただいている各種セミナーは、栄養介入で確実な成果を上げることに特化しており、『日本人の食事摂取基準』と『栄養ケアプロセス』に基づく内容となっています。特に「栄養相談のマスター基礎講座1~4」では『日本人の食事摂取基準』から対象者に適した食事構成例を設定する方法や栄養診断の根拠となる考え方、さらに私達が行った研究から得られたエビデンスとして、『日本人の食事摂取基準』には掲載されていない疾患と食事や生活との関連についてもお伝えしています。

◎ 「栄養相談のマスター基礎講座」のご案内 こちらへ ➡

  参加者の声 こちらへ ➡

この講座は4月以降も開催し、『日本人の食事摂取基準(2025年版)』と『栄養ケアプロセス』の基本的な部分から、症例を用いて「食事アセスメント」や「栄養診断」「栄養介入」の実践レベルでの栄養指導のシミュレーションを行います。

令和7年度の弊社セミナーは4月から例年通り、開催します。各種テーマや日程のお問い合わせも増えて来ましたが、3月にはご案内させていただきます。今すこしお待ちくださるようお願い致します。

◇ライター情報◇
安達 美佐
栄養サポートネットワーク合同会社 代表・管理栄養士
卒業後、病院、保健所で経験を積み、その後、個人開業栄養士として独立。40歳代にアメリカで管理栄養士活動を実際に見る機会を得て、誇りを持って仕事をする方々に管理栄養士のモデル像を見出す。糖尿病等の慢性疾患における栄養介入の成果を高めるために研究者としても活動を行っている。
【国家資格・認定資格】管理栄養士、Doctor of Public health、神奈川糖尿病療養指導士