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アメリカの病院で働く管理栄養士に「栄養ケアプロセス」について聞く〈1〉

「栄養ケアプロセス」はもう勉強しましたか?

昨今、日本でも「栄養ケアプロセス」を本格的に実務に導入しようという動きがありますが、管理栄養士・栄養士の皆さんはもう勉強しましたか?「栄養ケアプロセス」は、栄養管理の手順や用いる用語・概念の国際的な統一をめざして、アメリカ栄養士会が提案した栄養管理の手法です。

「栄養ケアプロセス」を使うことで、自分以外の他者(管理栄養士の同僚、その他の職種;医師や看護師、ケアマネジャー等々)にも対象者の栄養問題を理解していただきやすくなります。「栄養ケアプロセス」は①栄養アセスメント、②栄養診断、③栄養介入、④栄養モニタリングと評価、の4段階で構成されています。詳細は日本栄養士会のホームページにありますので、見てみるとよいです。

https://www.dietitian.or.jp/career/ncp/

弊社が提供する生活習慣改善プログラム『SILE』(Structured Individual Lifestyle Education)は、「栄養ケアプロセス」に基づいた手順で構成されており、プログラムを使用した栄養介入の効果を科学的に実証することができました(2013,Adachi)。現在、病院や診療所の栄養食事指導、特定保健指導事業で活用していただいております。

本場アメリカでは「栄養ケアプロセス」はどのようにしているのだろう

日本でも本格的に「栄養ケアプロセス」を用いる機運が高まったことから、より、日本の実情にあう「栄養ケアプロセス」を検討して行きたいと思い、すでに実務で当たり前に「栄養ケアプロセス」を 使っているアメリカの管理栄養士のMiyoshi Watanabe Pokrandt 氏(以下、美好さん)から定期的にレクチャー&コンサルを受けていくことにしました。

美好さんは、日本で管理栄養士の資格を得て、アメリカでRD(登録管理栄養士)の資格を取得し、ウイスコンシン州の総合病院で管理栄養士として働き5年目を迎えます。アメリカは栄養管理の業務委託がずいぶん前から進んでおり、美好さんは管理栄養士のマネジメント会社に所属し、病院の外来栄養指導を主に、時に院内の栄養管理も行う管理栄養士です。

今回が第1回目で、「栄養ケアプロセス」の栄養診断の結果を記述するPESの書き方を中心にお聞きしました。PESとは、対象者に起きている栄養問題を説明する内容の書き方で、“Problem Related to Etiology as Evidenced by Signs and Symptomsのと書くのですが、その中にあるP、E、Sを指します。日本では、「Sの根拠に基づき、Eが原因となった(関係した)、Pの栄養状態と栄養診断ができる」と反対から、つまり結論を最後に書く書き方が推奨されています。

PESは栄養管理の報告書に記載します。日本では、「PESは一文で書く」とされていますが、実際に書いてみると、結論に行きつくまでに、文字がたくさんになってしまうことが気になります。医師や看護師等に、すぐに患者さんの栄養問題が伝わるよう記録を残すことは、管理栄養士として重要なことと考えます。

そこで、弊社が関わる10数のクリニックでの外来栄養指導でも、PESの表記方法を検討し、これまでよりももっと速やかに書くことができ、分かりやすい報告書にしたいと思い、日常的に「栄養ケアプロセス」を使用している美好さんにPESの書き方や報告書の内容を一緒に検討していただくことをお願いしました。

PESは3行で書く!これだ!

アメリカ栄養士会関係の資料の中に、PESを3行に羅列して書く報告書のフォーマットがあったので、”これだ!”と思い、美好さんが実際に使用されている報告書様式と書き方をお聞きしました。すると、何と!この書き方を使用されていました!

例えば、夕食後にアイスクリームを食べる習慣が続き、中性脂肪値も150mg/dL、BMIも27 kg/m2となっている方では、美好さんは以下のように書くとのこと。

  • P (問題) 食生活関係の血液検査異常 
  • E (原因) エネルギー/糖分/脂肪摂取過剰 
  • S (兆候) 中性脂肪150mg/dl アイスクリームを食後に食べる習慣

あるいは

  • P (問題) 肥満
  • E (原因) エネルギー摂取過剰 
  • S (兆候) エネルギー必要量1,500カロリーに対して摂取量1,900カロリー  (そのうち200-300カロリーはアイスクリームなどのデザートによる)、BMI27  
  •                                                           

長い文章にしなくても、医療等に関わる方々なら、何が原因でどこが課題かが直感的にわかるだろうと思えました。もちろん、文章で書く管理栄養士もいるとのことですが、美好さんはこの書き方にしているそうです。これでもよいのだ!と確信が得られました。

アメリカではPESが書けていないと保険診療が減算になる場合もあるそうです

日本では高齢者の増加や、生活習慣病の増加などで増大する医療費削減が課題となっています。アメリカも同様だそうです。また、アメリカは一定要件を満たす方だけに公的保険加入が認められているため、それ以外の方は自費で診療を受け民間の医療保険会社の医療保険に加入し、医療費がかかった時には、そこから給付を受けるそうです。

そこで、患者本人が生活習慣の見直しが取り組める栄養指導に期待が寄せられているようです。ほとんどの医師が食事・生活改善のために患者に管理栄養士と会うことを勧め、断った場合は「3か月自力で行ってできなかったら管理栄養士と会うこと」と、約束もするそうです。また、外来栄養指導は「栄養ケアプロセス」に基づき介入が進められ、PESをきちんと表記することが給付基準となっている保険会社もあり、報告書は定期的にチェックされるということでした。

今回のセッションでは、PESを3行に並べて書いてもよいのだ、ということやアメリカの外来栄養指導のことなど興味深いお話も聞けました。今後も「栄養ケアプロセス」をより日本の外来栄養指導にフィットさせていけるようレクチャー&れ口コンサルを受けて行くつもりですので、皆様にも情報をお伝えしていきます。

弊社では「栄養ケアプロセス」、特に報告書の書き方をしっかり実務に活かすためのセミナーを“トレンドセミナー第2弾”として企画中です。企画が固まり次第、ホームページ、Facebook, Instagram等でお知らせします。楽しみにお待ちください!